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「年少時にギャンブルを始めれば始めるほど、病気は深刻化する」ギャンブル依存症の臨床的実態

「否認」の病気であり、「隠す」病気でもある

借金をしてはギャンブルにつぎ込む、受け皿はあるのか?

 帚木氏は14年にも同様の調査結果を明らかにしている。やはり、ギャンブル開始年齢が平均18・7歳、借金の開始年齢が29・1歳という進行を辿り、表6‐4に見るようにギャンブルにつぎ込んだ金額が1000万円以上のものが57・9%を占めたという。また債務整理に追い込まれたものが53・6%、精神科的な合併症が28%に見られたという。
 そして様々な経過の後にGA参加に至った平均年齢が41・7歳であり、GA参加後にギャンブルを再開する「スリップ」を経験したのが約半数にのぼるという。GAへの月平均参加回数が8・4回とされるが、継続的な治療に取組みながらも常にスリップする恐怖と背中合わせで生きていかなければならない。
 このように病院等の治療窓口を訪れ、そしてGAなどでの治療活動に参加する人は、ギャンブル依存症者のほんの一部分でしかない。「否認」の病気であり「隠す」病気であるギャンブル依存に苦しむ人々を、早期に発見し、適切な治療機関に紹介し、そして継続的な治療に参加させる体制や受け皿となるGA等の組織は、表6‐5に見るように極めて少数なのである。

 ギャンブル依存症者に医療プログラムを用いて治療するほか自助グループ等への紹介のみを行うものを含めても、ギャンブル依存症者に対応可能な病院は全国で40機関、診療所・クリニックで39機関にすぎない。
GAなどの治療活動に取組んでいるボランティア組織は283団体にすぎず、都道府県別で見た場合空白県も含めて極めて脆弱な体制であることがわかる。リハビリ施設はわずかに6カ所しかないのである。
 ギャンブル依存症に対応できる専門医やボランティアの育成も含めて人的な体制も整っていないもとで、カジノ合法化でギャンブル依存者が増大しても治療等をすればよいという推進派の主張は、日本のギャンブル依存症対応の治療体制の貧弱さを直視しない空理空論としか言いようがない。
<『カジノ幻想』より構成>

 

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鳥畑 与一

とりはた よいち

1958年生まれ。静岡大学人文社会科学部経済学科教授。大阪市立大学経営学研究科後期博士課程修了。専門は国際金融論。著書に『略奪的金融の暴走:金融版新自由主義のもたらしたもの』(学習の友社、2009年)、「グローバル資本主義下のファンド」(野中郁江他編著『ファンド規制と労働組合』序章、新日本出版社、2013年)、「カジノはほんとうに経済的効果をもたらすのか?」(全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会編『徹底批判!! カジノ賭博合法化―国民を食い物にする「カジノビジネス」の正体』第2章、合同出版、2014年)などがある。


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